所長メッセージ
学生一人ひとりの多様な個が輝くキャンパスを目指して
スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援センター
所長 竹田 正樹

2021年4月、学生支援センターの下に設置されていた障がい学生支援室は、「スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室(通称:SDA室)」として新たにスタートしました。そして2026年4月、本組織はさらに発展し、「スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援センター(SDAセンター)」として独立することとなりました。このたび、私、同志社大学スポーツ健康科学部の竹田正樹がセンター長を拝命いたしました。
SDAセンターの設置目的は、「身体、精神・発達等の障がいや、多様な性別や性的指向・性自認をもつ学生が、学生生活を送るうえで必要かつ適切な支援と機会を得られるようにするとともに、学生が相互に多様な人格と個性を尊重し合いながら共生できるよう、全学的な協力体制を推進すること」です。すべての学生がそれぞれの個性を発揮し、輝くことのできるキャンパスを実現することが、SDAセンターの使命です。本センターは、その実現に向けて、学内のさまざまな部署をつなぐハブとしての役割を担ってまいります。
SDAセンターの取り組みは、大きく二つの柱から成り立っています。一つは、すべての学生が学びの機会にアクセスできる環境を整える「アクセシビリティ支援」です。もう一つは、多様な性別や性的指向・性自認に関する理解を深め、安心して学生生活を送ることのできる環境を整える「SOGIに関する支援」です。SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity)は特定の人だけに関わるものではなく、すべての人に関わる概念です。
SDAセンターは、悩みや不安を抱える学生が安心して相談できる場所であると同時に、多様性について共に学び、理解を深める場でありたいと考えています。
さて、ここで私が考えるSDAの基本的な考え方を二つご紹介いたします。
一つ目は、「個性の尊重」です。私は2013年に1年間、ハンガリーのSemmelweis大学スポーツ科学部に留学し、その後も主に欧米を中心に継続的に海外での経験を重ねてきました。その中で強く感じたのは、「個を尊重する価値観」の浸透です。これは日本との大きな違いであると感じています。日本では、ともすれば画一的な行動様式や価値観のもとで教育が行われがちですが、人は本来それぞれ異なる存在であり、考え方も多様です。重要なのは、その違いを認め合い、それぞれの価値観を尊重することです。Respectの精神は極めて重要であり、この考え方なくして心の豊かさは育まれません。
新島襄の「人一人は大切なり」という言葉には、個人の尊厳を守ること、教育の本質は一人ひとりに向き合うこと、そして社会は一人から変わるという信念が込められています。この「個の尊重」は同志社大学の教育理念の根幹であり、SDAセンターの方針にも深く通じるものです。
二つ目は、「これまでの研究・実践経験を本分野に活かすこと」です。私は長年、クロスカントリースキーの研究・指導に携わり、ナショナルチームやパラリンピック日本代表のサポートにも関わってきました。2026年に開催されたミラノ・コルティナオリンピック・パラリンピックでは、障がいのあるアスリートが競技に参加しやすい環境を実現するために、現場で多くの創意工夫が積み重ねられていることを目の当たりにしました。例えば、車椅子スキーの選手がゴンドラ乗り場まで移動できるよう通路に雪を敷き詰めたり、段差を解消したり、リフトの速度を調整したりするなど、従来にはない工夫が実践されていました。これらは、あらかじめ定められた仕組みによるものだけではなく、現場の人々が当事者の立場に立って考え、試行錯誤を重ねた結果として実現されたものです。その過程そのものが、新たな学びと知見を生み出しています。ダイバーシティへの対応とは、制度の整備や前例の踏襲にとどまらず、人の立場に立って考え、創意工夫を重ねながら自ら進化していく姿勢が重要であると考えています。
この課題は大学だけにとどまるものではなく、日本社会全体が向き合うべきテーマでもあります。海外の研究者と交流する中で、日本社会のダイバーシティに関する取り組みが、必ずしも十分に理解されていないと感じる場面に出会うこともあります。社会は本来、さまざまな価値観によって成り立っています。日本は島国であることもあり、ともすれば固定観念にとらわれがちになる側面があるかもしれません。一方、陸続きの地域では多様な文化や価値観が日常的に交錯しています。私たちも、より広い視野を持ち、多様な価値観に開かれた社会を目指していく必要があるのではないでしょうか。
私自身、この分野の専門家というわけではありません。知らないことや経験していないことも多くあります。しかし、学生、教職員、そして学内外の多くの方々とともに学びながら、同志社大学におけるダイバーシティとアクセシビリティの取り組みをさらに発展させていきたいと考えています。
同志社の「一人ひとりを大切にする」精神のもと、すべての学生が安心して学び、個性を発揮できるキャンパスの実現を目指してまいります。皆さまのご理解とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。