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室長メッセージ

学生の多様な個が輝くキャンパスを目指して
スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室開設

スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室
室長 松川真美

 2021年4月、学生支援センターの下にあった障がい学生支援室が、「スチューデントダイバーシティ・アクセシビリティ支援室(通称:SDA室)」として生まれ変わりました。
 SDA室の設置目的は「身体、精神等の障がいや、多様な性別や性的指向・性自認をもつ学生が、学生生活を送るうえで必要かつ適切な支援と機会を得られるよう、また学生が相互に多様な人格と個性を尊重し合いながら共生できるように、全学的協力体制を推進すること」です。改組のポイントは、障がい学生の支援に限定せず、同志社大学を選んでくれたすべての学生が、それぞれの個性を発揮して輝けるキャンパスの実現を目指しているところにあります。本学に在籍する学生ひとりひとりがそれぞれの個を発揮して輝けるよう、そして本学キャンパスが多様な個の集合体が生み出すイノベーションの発信地となれるよう、関連部署をつなぐハブとなることがSDA室のミッションです。
 このように、本学学生の「ダイバーシティ」を推進する組織としてのウィングを構えつつも、まずは、身体、精神等の障がいのある学生および多様な性別や性的指向・性自認をもつ学生への支援を二つの柱としています。前者を「アクセシビリティ支援部門」、後者を「SOGI部門」と呼ぶことにします。アクセシビリティ支援、SOGIのどちらも聞きなれない言葉かもしれません。これには「マイノリティ支援」からすべての学生にとっての「自分事」への転換を目指したSDA室の理念が根底にあります。

障がい学生支援からアクセシビリティ支援へ

 2000年に障がい学生支援制度、2008年に障がい学生支援室が設置され、本学は障がい学生支援の先進校として日本の高等教育機関を先導的な立場で牽引してきました。例えば、今では多くの大学で採用されている「学生が学生を支援する」方式ですが、2000年に本学が障がい学生支援部門を「教務部」ではなく「学生部」に置いたことが嚆矢とされています。このような実績を積んできた「同志社大学の障がい学生支援」ですから、組織の看板から「障がい」の文言がなくなってしまうことを心配してくださる方も少なくありませんでした。なぜ「障がい」の看板を思い切って下ろすことにしたのか、その理由をご説明したいと思います。
 これには「障がい」の社会モデルの考え方が関係しています。例えば、脚が不自由な人が「なぜ自由に目的地に行けないのか」ということを考えるとき、「脚に障がいがあるから」(医学モデル)とするのではなく、「高層階に行く手段が階段しかないから」というように社会の側にも原因があると考えるのが社会モデルです。ここに、「障がい学生支援」の看板をあえて下ろしたヒントがあります。「障がいのある学生(マイノリティ)」に対して支援をしてあげる(助けてあげる)のではなく、すべての学生が等しく学びの機会に「アクセス」できるようにアクセシビリティを確保しましょう、それが「教育機関としての責務である」との考えです。「障がい」の文言を外し、アクセシビリティ支援とすることで、わかりにくくなるのではとのご心配もあるかと思います。しかし、同志社大学では障がいの社会モデルの考え方をすべての構成員が理解し、アクセシビリティ支援という文言が「当たり前」に浸透している組織でありたい、との願いが込められているのです。

LGBTQ支援から多様なSOGIの理解へ

 SDA室の柱のもう一つに、「多様な性別や性的指向・性自認をもつ学生」に関わる業務があります。ここでも、言葉の紹介をしておきたいと思います。おそらく皆さんは、LGBTQ(LGBT+、LGBTQX)という言葉はご存じだろうと思います。Lesbian(レズビアン:女性同性愛者)、Gay(ゲイ:男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル:両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー:身体的な性と性自認が一致しない人)、Q(クエスチョニング:性的指向や性自認を定めない人)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称としてここ数年の間にずいぶん社会に浸透してきました。
 一方で、最近SOGI(ソジ・ソギ)という言葉が急速に広まってきています。SOGIとは、Sexual Orientation (性的指向:好きになる性)and Gender Identity(自身で認識している性)の頭文字をとったものです。LGBTQが性的少数者をさす言葉であるのに対し、SOGI(性の多様性)はすべての人に当てはまる概念です。性の問題は一部の少数者の方々だけの問題なのではなく、すべての人に関わる問題として捉えるべきという考え方に依拠しています。
 SDA室は、SOGIに関して悩みや不安を抱える学生が安心して相談できる場所であることは言うまでもなく、「SOGIについてもっと知りたい」「一緒に勉強してみたい」と考える学生さんにとっても共に集える場所でありたいと思っています。

個が輝くキャンパスの実現へ:Diversity, Equity and Inclusion

 Diversityは、日本語では「多様性」と訳されます。つまり、ダイバーシティが意味するところは単に国籍、性別、障がい、性的指向・性自認、文化、宗教、思想信条等、様々な背景を持つ「いろんな人がいる」という状態、ただそれだけです。「いろんな人」がそれぞれの力を発揮し、イノベーションを生み出すためには、単に「いろんな人」がいる状態(多様性)を推進するだけでは不十分です。なぜなら、その力を発揮するためには何らかのサポートが必要だったり、そもそもその「機会」にすら恵まれなかったりするからです。そこで、近年、ダイバーシティを推進する上では、3つの柱(DEI:Diversity, Equity and Inclusion)が重要であるとされています。
 一つ目はDiversityのDです.これだけでは個々の力が発揮できるとは限らないことは前述の通りです。
 二つ目はEquityのEです。Equityは、「公平性」を意味する言葉です。多様な人がいる中で、それぞれが能力を発揮するためには、すべての人に公正な機会が確保され、そのために必要な支援が受けられる必要があります。
 そして三つ目はInclusionのIです.Inclusionは「包摂性」と訳されることもありますが、そのまま「インクルージョン」としてその概念が浸透してきました。多様な個性によって構成されるコミュニティの中で「私は私のままここで受け入れられている」という安心感が得られる状態です。
 人一人を大切にする同志社の風土の上で、学生一人一人が個を発揮して輝けるキャンパスを実現するために、Diversity、EquityそしてInclusionをキーワードに新たなミッションに向かいたいと思います。皆さまお力添えをいただければと思います。